予告したのは随分前ですが、紹介カテゴリ。
有川浩「空の中」です。
電撃小説大賞受賞作「塩の街」でデビュー。
第2作目のこの作品は、
電撃からは異例ともいえるハードカバーでの出版。
とはいえ当時僕は、
この作品が出てることを知りませんでした。
第3作目の「海の底」発売後に知りました。
まずは帯からの引用。
200X年、二度の航空機事故が人類を眠れる秘密と接触させた―――
「変な生き物ゆうたわね?そやね?」
―――秘密を拾った子供たち。
「お前を事故空域に連れて行く。話は現場を見てからだ」
―――秘密を探す大人たち。
秘密に関わるすべての人が集ったその場所で、最後に救われるのは誰か。
国産航空機プロジェクト「スワローテイル」のテスト飛行。
航空自衛隊の訓練飛行。
四国沖、高度2万メートルでこれら2機の飛行機が爆破炎上。
これがこのお話のプロローグです。
例によって長めなので追記で。
タイトルからわかるように、
これは自衛隊三部作の「空」すなわち空自がメインとなる話。
物語は2つの視点から展開する。
1人は、海岸でUMAを拾った斉木瞬。
彼は高度な知能を有するその生物に「フェイク」と名を与えた。
もう1人は「スワローテイル」事故調査委員の春名高巳。
彼は航空自衛隊岐阜基地に、事故原因の調査のために訪れる。
事故でパイロットだった父親を亡くした瞬。
幼馴染の佳江や、近所の漁師「宮じい」と暮らしていたが、
父を失った寂しさを紛らわすために、彼は拾った「フェイク」を偏愛する。
「もっと言葉、勉強しような。そうしたらお前、もっと人間みたいになれるぞ」
もっと完璧な家族に―――フェイクはなれる。
フェイクはずっと家にいて、ずっと瞬を待っていて、いなくならない。
その点で、フェイクは死んでしまった祖父や父より完璧だった。
彼のどこか歪んだ愛情に、佳江は不安を覚えていった。
空自の事故の際、飛行は2機で行っていた。
事故で亡くなったのは斉木三佐―――瞬の、父親だ。
もう一機のパイロット武田光稀三尉は、
2万メートルに差し掛かる直前、直感で操縦桿を捻り事なきを得た。
光稀の証言を求めに来た高巳は、先入観から名前を読み間違える。
「あの、武田―――ミツキ?コウキ?あれ?」
「あんな字面ですがミキと読みます。どうやらご期待を裏切ったようで」
光稀は、女性パイロットだった。
高巳と光稀の2人が事故空域の検証に向かったとき。
彼らは、2万メートルに潜む「彼」に出会った。
『あなた・たち・航空自衛隊岐阜基地所属の武田光稀三尉・と・&・日本航空機設計事故調査員・春名高巳・は・now・今・現在・私の・上に・いる・stay here・ます』
飛行機に恋愛物に著者の故郷高知の仁淀の風景と、
著者の好きなものを無節操に閉じ込めた感動作。
ご一読ください。
短編集「クジラの彼」には、
高巳と光稀の後日談「ファイターパイロットの君」が収録されています。
読んだとき、自分の中の「空の中」の評価が3倍くらいになりました。
ベタ甘ラヴは正義。
光稀さんのツンデレっぷりに悶絶です。
まともなレビュー書いてたのにオチがこんなですみません。
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