どうにも言葉がまとまらず、
記事が書けないという時があります。
そんなときの保険が「紹介」カテゴリ。
お待たせしました「塩の街」レビューです。
第10回電撃ゲーム小説大賞「大賞」、
有川浩のデビュー作。
本編大幅改稿、番外編短編4編を加えて
堂々のハードカバーリメイクです。
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた―――
(帯より)
冒頭から、世界は崩壊しかけています。
その原因である「塩害」については、ここでは言えません。
本を読んでもらうしかないというのがつらいところです。
その壊れてしまった世界を一言で表現するなら。
街中に立ち並び風化していく塩の柱は、
もはや何の変哲もないただの景色だ。
(目次より)
東京でひっそりと暮らす秋庭と真奈。
静かに暮らす二人の前を様々な人物が行き過ぎる。
巨大なリュックを背負って海を目指す遼一。
脱獄囚のトモヤ。
彼らとの出会いが、二人に何かを落としていく。
そんな中、入江という人物が訪れる。
「世界とか、救ってみたくない?」
彼の訪問が、物語を加速させていく。
―――世界なんかどうなってもいい。
あの人が無事でいてくれさえすればそれで。
作品のテーマはこれだけです。
世界は滅びてしまうけど、
自分と自分の大事な人は世界が滅びるまでは永らえる。
その結果を望む登場人物たちが作り出すお話です。
終盤、入江の辛辣な台詞があります。
24時間テレビに合わせたかった理由もそこに。
―――昔さあ、愛は世界を救うって、ヘドが出そうなキャッチコピーの番組やってたの知ってる?
あれがもう、嫌いでねえ。
愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者たちしか救わないんだよ。救われるのは当事者達が取捨選択した結果の対象さ―――PR